能の声楽部分が謡です。旋律的な部分だけでなくせりふの部分をも含みます。しかし、能の一要素にとどまらず、室町時代(1392〜1573)ごろから独立した芸能としても愛好され、単独での演奏、鑑賞も行われてきました。現在も庶民に根強い愛好者がいて、このことが能の存続を支える基盤ともなっています。
長唄は三味線に合わせて歌う長編の歌い物で、江戸時代(1603〜1867)中期に大きく発達しました。それまでの江戸(今の東京)の文化はすべて京都や大阪の文化の模倣だったのですが、江戸生まれ・江戸育ちの奏者が独自の曲調を生み出し、彼らが演奏することによって、初めて江戸独自ともいえる文化が誕生したのです。 もとは歌舞伎の舞踊曲として生まれた長唄ですが、その発展過程で謡、狂言、民謡などの歌詞や節回しが取り入れられたため、きわめて多様性に富んでいるという特徴があります。また、時には舞踊から独立し、三味線だけの伴奏で物語風の長唄が演奏されることもあります。
小唄も今日に引き継がれている邦楽の1つで、三味線に合わせて洒落や風刺のきいた歌が歌われます。江戸時代(1603〜1867)の小品の三味線唄である端唄から派生したもので、明治時代(1868〜1912)後期に今日のような形になりました。現在では家元がたくさんあり、小唄の愛好者も多く、手軽にできる宴会芸としても人気があります。また、小唄の三味線ではばちを使わず、爪弾いて演奏するのが特徴